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薬の値段はどう決まる?

一条通病院薬剤科 主任 長瀬 多加洋
「道北の医療」2023年7月号掲載

単純に薬と言っても大きく2つに分かれます。市販薬と処方薬です。前者は薬局やドラッグストアで処方せんがなくとも買える薬です。OTCという言い方もします。こちらは企業が自由に値段を決めることができるので非常にシンプルです。

一方、後者は医師の処方せんを保険薬局に持って行く必要がある薬です。医療用医薬品とも言います。こちらは企業が市場原則で値段を決めるわけではありません。公的医療保険制度があるためです。日本は国民皆保険制度で基本的に平等に医療が受けられるようになっています。ですから薬の価格も国が決めています。ちなみに米国などは皆保険制度ではないので企業が価格を決めています。

薬価の決め方

ではどのように薬の価格を決めているのでしょうか。それを定めた制度が薬価制度です。世に出る新しい薬は原価計算や効果の似た薬との価格の比較、海外価格との比較を総合して計算された価格をつけられます。これを薬価といいます。こうして薬価がついた時点で始めて処方薬として認められます。新しい薬は研究開発に長い時間と莫大な費用がかかっているため、それが考慮され高価な薬価がつけられます。つまり薬価のほとんどは研究開発費と言っても過言ではありません。

医薬品の原価

医薬品の原価自体にそれほど差はなく、それでも同じ新薬で30円くらいのものから、あまり多くはありませんが1、000円や10、000円の薬価がつくものがあります。

例えば、患者数の多い高血圧など慢性疾患の薬剤は安くてもそれなりに利益を挙げられますが、適応する患者数の少ない例えば抗癌剤などは、単価を上げなければ高額な開発費を回収することができないのです。つまり命に関わる薬では高額になったとしても流通させる必要があるからです。

ただし日本では高額療養費制度や特定疾患制度があるので患者さんの自己負担が高くなりすぎないようになっています。

ジェネリック医薬品

ジェネリック医薬品という言葉が出ましたが、これは新薬と同じ有効成分を使っており品質、効き目、安全性が同等なお薬です。研究開発をする必要がないのでコストがかかっていない分、安価な薬価になります。簡単に説明すると新しく出たジェネリックは先発品の約4割、5割程度の薬価になります。

窓口負担の内訳

実際に皆さんが保険薬局の窓口で支払うのは純粋な薬価(薬剤料)に調剤技術料(薬剤師が行う作業への手数料と思っていただければ結構です)薬学管理料(安全に薬を使用できるように文書や説明で情報を提供するその管理に対する費用)等です。少し複雑ですが支払った後に明細書を確認してみてください。点数で記載されている場合は1点を10円として計算すると請求金額になります。

薬が入手困難に

同じ成分の薬剤でもジェネリック医薬品を使うか、どこの会社のものを使用するかは病院の専門の委員会で決めています。同じ条件であれば基本的にジェネリックで安くなる方を選択する方針をとっています。しかし、近年は様々な事情が相まって、非常に薬が手に入りにくい状況となっています。ジェネリックが手に入らない場合は、治療が継続できることを優先して、ジェネリックでない薬へ変更する判断を行う場合がありますが、ご理解いただければ幸いです。

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