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大腸CT検査について

一条通病院放射線科 放射線技師 峯岸 幸太郎
「道北の医療」2022年10月号掲載

「便潜血検査で陽性になったけど大腸カメラはどうしてもしたくない…」と大腸の検査に二の足を踏む経験をしたことが、この記事を読んでいる方の中にもいるのではないでしょうか?

今回は当院で2016年より開始している『大腸CT』という検査についてお話します。

大腸がんは、大腸(結腸・直腸)に発生するがんで、日本では大腸がんの罹患者の数は男女合わせると一番多いがんと言われています。早期の段階では自覚症状はほとんどなく、進行すると症状が出ることが多くなります。症状としては腹痛・血便・下血・下痢・便秘・体重減少・おなかの張りなど様々です。大腸がんによる死亡率減少のためには早期発見、早期治療がとても重要です。しかしその一方で、大腸がん検診の受診率が30~40%程度と低率で、さらにがん検診で『精密検査が必要』とされた方の受診率は60%程度にとどまります。「内視鏡検査は苦痛だ」といったマイナスイメージが検査の受診率を低迷させているのが一因と考えられます。そこで今回は、苦痛が少ない大腸CTについてご紹介します。


どんな前処置をするの?

検査2日前の夜から、下剤・検査食・お水・造影剤を説明書に沿って服用します。大腸カメラ検査の前処置のように大量の下剤を飲んで腸の中身を完全に空っぽにする必要はありません。最終的に水様便が複数回確認できればOKです。


検査の流れは?

肛門から直径約5㎜の細いチューブを5㎝ほど挿入し、そこから炭酸ガスを注入して大腸が膨らんだ状態になったら撮影を開始します。撮影は仰向けとうつ伏せの2回行います。検査開始から終了まで15分~20分程度です。大腸の炭酸ガスは空気よりも体内への吸収が早く、検査後は5~10分程度でお腹は楽になります。


大腸カメラと比較すると?

大腸カメラと比べた場合、前処置や検査の負担が少なくすむため、高齢者や、過去に大腸内視鏡の挿入が困難であった方でも検査が容易です。また、大腸穿孔や出血などの合併症が少ないことや、大腸以外の腹部臓器情報も得られるというメリットがありますが、以下のようなデメリットもあります。


  • 病変組織の採取ができないため、異常が検出された場合は大腸内視鏡を受ける必要があります。
  • 低線量ながら医療被ばくがあるため、妊娠の可能性がある方は検査を受けることができません。
  • 平坦な病変や5㎜以下のポリープの抽出精度は大腸内視鏡に比べて劣ります。
  • 体外からの撮影であるため、病変の色や固さの情報は得られません。

いかがだったでしょうか? デメリットにも触れましたが、大腸CTで異常があった場合には大腸カメラを受ける必要があるなど、大腸CTは大腸カメラ検査を完全に補完できるものではありません。しかし「便潜血検査で陽性になったけど大腸カメラの時に痛くて大変な思いをしたから嫌…」「大腸カメラに対して強い恐怖心がある」などで検査をためらっている方は、一度診察で相談してみてはいかがでしょうか。尚、大腸CTの検査適応となる方は、便潜血検査陽性や腫瘍マーカー上昇など、他検査により大腸悪性腫瘍が疑われる方となっています。


仮想内視鏡画像
仮想内視鏡画像(大腸を中から見た画像)
仮想注腸画像
仮想注腸画像(大腸を外から見た画像)
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